オーダーメイド殺人クラブ/辻村 深月
2011年11月8日
オーダーメイド殺人クラブ
主人公の行動を私は暴走としてしかとらえられない。
自分の命を使って周囲の注目を集めたい。なぜ集めたいのか。
同級生にも先生にも親にもとにかく周りの人々すべての後悔と反省と空しさを強く引き起こしてやりたい。
自分のたった一つの命を使って最も効果的に周囲の気持ちを引き付けて永遠に後悔させたい。その情景を夢想するだけで恍惚とする。しかしその時点で主人公の命はこの世にない。 これを独りよがりという。勝手な判断という。
あまりに狭窄な視野でしか、物事を考えられない。狭窄だからこそ深みにはまりぬけられない。中学二年生の生徒に見られる典型的な精神状態だとされ、「中二病」などとまで称される。
クラスで無視される女の子と、昆虫系などと揶揄される男の子。接点などあるはずもなかったのに、偶然が二人を引き寄せた。
河原で見かけたその男の子。何かを蹴っているような不可解なしぐさが気になり、女の子は男の子の去った後にそうっと踏み入った。そして蹴っていたビニール袋を見つけた。
ビニール袋からは赤黒いどろっとした液体がはみ出して流れた。この目撃談を後日男の子に持ちかける。
不穏な落ち着かない関係が生まれ、女の子は男の子に殺人の依頼を打ち明ける。殺し方に注文を付ける。事例を調べ、模擬実験やスタジオを探して写真を撮り衣装選びまでする。
殺害場所も決めて、実施予定日も決めた。もうどうにも後戻りできない、身動きのできないところまで来ている。
男の子は女の子から受けたオーダーを実行するのか。殺人というオーダーを。
読了後、作者に興味を持ち調べてみた。女性作家だった。インタビューを読み肖像も見ることができた。なるほどと思った。思いやりと優しさの伝わるインタビュー記事であった。
私はこの作者が好きになった。真剣に少年少女を見つめる目は透徹を貫いているが、温かみを放り出して置き去りにするような作品ではなかった。
これはラブストーリーだ。愛情の物語を少し変わった視点から眺めさせてもらっていたのではないか。人生をスタートさせる若い人たちのラブストーリー。つい手を握って応援したくなる。
でもそれはやめておこう。そっと見守ろう。
その日まで―紅雲町珈琲屋こよみ/吉永 南央
2011年11月5日
その日まで―紅雲町珈琲屋こよみ
2008年に前作「紅雲町ものがたり」を読んだ。もう3年たつのか。あの時の胸疼く思い。目が冴えた夜。あの苦い思いを再び味わうのだろうか。
少しなつかしい名前。いつも着物をきれいに着こなしているシャキッとしたおばあちゃん。杉浦草。転んだりしてないか。病気など患ってないだろうか。
杉浦草の営む小蔵屋はコーヒー豆と瀬戸物などの和風雑貨の店。あれからお店もどうしているかな。
よかった。ほっとした。草のアイデアが受けて店は常連さんも増えにぎわっているようだ。ひとまず安心。さすが大正生まれは強い。頑張ってるなぁ。
小さな男の子がきっかけで田沼というさわやかな男性が草の店に来た。草を手伝っている久美ちゃんも好感を抱く。
この人ならと一目見て、草は彼に最近の出来事を相談。実は気が重くなるいやな出来事が続けざまに起きていたのだ。
草の身の回りの嫌な出来事とは悪質な詐欺まがいの不動産買いたたき。不動産の売買は売る人と買う人の自由意思による契約だ。
だから本来どちらか片方が気に入らなければ、売らなければよいし買わなければよいはず。
買いたたきの手口が見えてきた。かなり値を下げて売らざるをえなくする悪質な手口なのだ。
知らなければ何も起きなかったのに。しかし人と人のつながりから草は何が起きているのか知ってしまう。
そして草の気持ちは落ち着かなくなる。
とうとう草の店に直接的な被害まで及ぶようになり、ついに草は意を決する。何とかしなければ。ところが頼りにしようと思っていた田沼の様子がおかしい。
ならば草にできることはいったいなんだろう。一人、草は黒幕の中心人物に会いに行く。
巨悪という言い方は大げさかもしれないが、杉浦草が少しずつ心を痛める出来事が続いて行き、ついに巨悪に立ち向かう構図がこの六話に及ぶ連作を支えている。前作と大きく異なる構図といえるが、草の心の細かな動きは前作同様読む者の胸にしみるように伝わってくる。
読み終わってやはり胸に残る痛みと苦みは変わらない。この味わいはこれまで読んだ小説とは比較できない屹立した孤高の痛みと苦みだと思う。ぜひ、また続編で杉浦草に会いたい。心からそう思う。
【蛇足ながら】
66ページにとてもいいセリフがある。草は両親の口癖を思い出し、今はもういない父と母に思いを馳せる。深いです。
「どこで買っても、たわしはたわし。ごまはごま。」
どんな意味なのか知りたい方は是非本書を手に取ってみていただきたい。
あなたの一押しの本は何ですか?
2011年10月25日
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